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【音楽家の手の障害と対応策】2022年10月9日
先月は「音楽する脳を科学する」の第1弾として「アガリの対応策」をアップしましたが、今回はその第2弾として「音楽家の手の障害と対応策」です。
一般的には何でもかんでも腱鞘炎だと誤解される方が多いのですが、3つの障害に分かれるそうです。
①腱鞘炎→腱鞘の障害
②手根管症候群→末梢神経の障害
③ジストニア→中枢神経の障害
原因はどれも使い過ぎから来るそうで、症状も似ているため勘違いされる方が多いのだそうです。解剖医学的な説明もあり、中村先生曰く、
・手がどれ程驚異的なメカニズムで動いているかを理解し、手をいたわろう。
・全てが腱鞘炎ではない。
・予防に勝る対策なし→正しく無理の無い練習と休む勇気を
・不幸にもなってしまったら専門医の診断をある年配の方の質問への答えで、「年 とともに腱も硬くなってきますので、無理な手の開きで練習するより、ショートスケールなどを使う事で楽に演奏できる様にする事も有効です」と言うお話もありました。これは私も常日頃言っていることです。更に練習前後に指、手、腕のストレッチ運動もお勧めします。
①腱鞘炎
腱鞘炎の主な原因は「手首・指の使い過ぎ」
腱鞘とは、骨と筋肉をつないでいる腱(ひも状の組織)を包む鞘(筒状の組織)で
腱鞘炎とは、この腱鞘と腱がこすれ合って炎症を起こす病気です。
②「ばね指」(弾発指)
バネ指とは、指の曲げ伸ばしをする際に引っ掛かりを感じる状態をいいます。指が動くとき、筋肉と骨をつなぎとめる役割をしている腱が腱鞘の中を通り抜けます。
正常な状態では滑らかに動きますが、炎症が起こっていると滑らかさが失われ引っ掛かりを感じるようになり、腱が通るたびに擦れて強い痛みや熱を感じます。
放置してバネ指が悪化していくと、「曲がったまま伸びない」状態になることもあります。
③手根管症候群→末梢神経の障害
正中神経が手首(手関節)にある手根管というトンネル内で圧迫された状態です。それに手首(手関節)の運動が加わって手根管症候群は生じます。
症状としては、人差し指、中指がしびれ、痛みがでますが、最終的には親指から薬指の親指側の3本半の指がしびれます。急性期には、このしびれ、痛みは明け方に強く、目を覚ますと手がしびれ、痛みます。
これも手の使い過ぎによっておこる場合がありますが、特発性というものが多く、原因不明とされていますので、整形外科医に診察してもらう必要があります。
これら①②③は指の使い過ぎで起こることから、ギターなど楽器の練習で指を酷使することが原因となります。
【対応策】
1.練習を長時間連続して行わず、休憩を挟みながら指を休める。
2.熱を持ってきたり、痛みを感じ始めたら練習を中断し、指を冷やすのも効果的。
3.脱力の練習を心がける。
4.痛くなったら暫く練習をせず炎症が完全になくなるまで練習を我慢する。
少し痛みが取れたと思って再開すると腱鞘炎を再発する危険性があります。
5.練習を再開する時には15分程度の練習から徐々に練習時間を伸ばしていく。
6.練習の前後に手、指、手首などのストレッチをする。
④ジストニア→中枢神経の障害
ジストニアは、体の一部において異常に筋肉が収縮する病気です。ジストニアの症状は、手や足、首や体幹など様々な箇所に発症しますが、その原因は脳からの指令の異常にあります。
楽器を演奏するときに指や手首が曲がったり、伸びたり、こわばったりする局所ジストニアを音楽家ジストニアなどと呼ばれます。
これは脳の病気ですので神経内科医に相談するしかありません。