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【ハーモニクスについて】2023年06月3日
ギターのハーモニクスには自然ハーモニックスと人工ハーモニクスの2種類があります。
1.自然ハーモニックス
これは、ご存じのように3,4,5,7,9,12,19,24フレットなどを軽く触れて出すハーモニックスです。これは弦の分割振動によって生じる音で、その分割比は下記の様になります。
12Fが弦長の1/2、
7F&19Fが 1/3、
5Fが 1/4、
4Fが 1/5、
3Fが 1/6、
などに分割して振動することで発生する音です。
例えば12フレットの上を左指で軽く触れて弾弦すると同時に左指を離すと、12Fの真上の点は振動していなく0フレットから12Fまでと12Fからサドルまでの2つの山が振動しています。従って実音は1オクターブ上の音になる訳です。
同様に5Fのハーモニクスは弦の1/4ずつの山が4つ振動して2オクターブ上の音が鳴ります。
これらを理解するのに倍音と実音の話を少しします。
倍音とは振動周波数が2倍、3倍、4倍、・・倍になる音の事なのですが、下記図を見て頂くと分かるように周波数が2倍になると1オクターブ高くなり、4倍になると2オクターブ高くなっています。
そして7Fのハーモニクスは弦長が1/3ですから3倍音になる訳です。つまりその弦の1オクターブ+5度上の音ですね。例えば5弦を例にとると、解放のAの音の3倍音は上の図で言うと第4間のE音になります。この法則を理解した上で自然ハーモニクスの各フレット上実音を言葉で表すと下記の様になります。
フレット 分割比 実音
3F 1/6 2オクターブ+5度
4F、9F&16F 1/5 2オクターブ+長3度
5F 1/4 2オクターブ
7F&19F 1/3 1オクターブ+5度
12F 1/2 1オクターブ
これらをギターの指板上に音名を記した図が下記になります。
(出展:現代ギター社ギター奏法のすべて)
ただし、これらを覚えるのは大変ですから上述の法則を覚えておくと各ハーモニクスの実音を知ることは容易に出来ます。
ここで注意が必要なのは弦に触れる場所です。自然ハーモニックスは、弦長の1/2(12フレット)、1/3(7フレット)などですから、音階で言えば純正率音階になります。しかし、ギターのフレットは12平均率音階を基に作られているので、ハーモニックスがきれいに鳴る位置とはずれるのです。従ってそのフレットの位置付近できれいに鳴るポイントを探さなくてはなりません。
この図では弦長650㎜のギターの場合にこの位ずれますと表記してあります。弦長によってこの誤差も変わりますのでご自身のギターでどの位置が一番ハーモニクスがきれいに出るかを確認してみてください。
ここで自然ハーモニクスをチューニングに使う時の注意点があります。
自然ハーモニクスは純正調、フレットを押さえて出す実音は平均律なので音程のずれが生じます。従って自然ハーモニクスで調弦しても必ず実音でずれの修正をする必要があります。この時にはオクターブ又は5度で確認するのがいいでしょう。
私は次のように確認しています。
1.⑤解放のAと③2FのA, ⑤3FのCと5度上の③解放のG・・・Aでぴったり合わせるとCとGの5度に僅かに揺らぎが生じます。平均律のフレッチングによるものです。そこで気持ち③のGを上げてCとGの揺らぎを少なくします。ここで揺らぎを無くして5度が完全に調和すると③2FのAが⑤解放のAより僅かに高くなってしまいます。その中間を探して調弦します。そして⑥3FのGと③解放のGとも確認します。
2.⑥解放Eと④2FのE、そして①解放のE
3.④解放Dと②3FのD、そして⑤2FのBと②解放のB など
他にもいろんな方法があろうかと思います。自然ハーモニクスだけでの調弦は避けると良いでしょう。
また、ハーモニックスにビブラートをかける場合には、ハーモニックスの音の高さと同じ高さ(オクターブ上下しても良い)の他の弦のポジションを押弦してビブラートすれば、共振作用でビブラートがかかります。
2.オクターブハーモニックス(人工ハーモニックス)
これは、左手で押弦したポジションの12フレット上を右手の指先で触れて弾くことによりハーモニックスを作ります。 12フレット上の位置は、弦長の半分になりますから押弦している音程の1オクターブ上の音が出ます。
通常は、人差し指で触れて薬指で弾弦します。低音弦の場合は人差し指で触れて親指で弾弦することもあり、この場合は力強いハーモニクスを出すことが出来ます。また、低音弦(巻線)を薬指で弾弦すると爪が弦に擦れて起こる雑音も出やすくなりますので要注意です。
人差し指で押さえる場所は12Fをナットと見立てて、左手で押さえている弦のポジションと同じと考えれば良いわけです。
以上、ご参考になさってください。